2023.04.18
新しいEU一般安全規則が、車両とビジネスに与える影響とは?
ここでは、新しいGSR法の要件に関する情報と、Scaniaがすでに車両とドライバー、そしてお客様の安全を守るために「スマートで安全な」対策を行っている理由についてご紹介します。
2024年7月以降、欧州連合内の車両登録はすべて、EUの新しい交通安全指令である一般安全規則(General Safety Regulation、GSR)に従う必要があります。
GSRは、2050年までにヨーロッパの道路交通において死亡・重傷事故をゼロにすることを目指す、EUの「ビジョン・ゼロ」構想の一環です。また、これによりEU圏内で自動運転完全無人車両を認可する法的枠組みも確立され、国際連合欧州経済委員会による指令との調整が図られます。
2022年7月に施行された新しい規則では、2024年7月以降に自動車メーカーによってヨーロッパで登録されるすべてのトラックとバスは、定められた8点の自動運転者支援安全機能を搭載する必要があります。
その日付以降に販売される新しいScaniaのトラックとバスはすべて、この基準に完全に準拠したものとなります。実際のところ、求められる安全支援技術の大半は、当社の現行車両でもすでに十分確立されているのです。このEU法ではさらに3点の必須安全機能についても定められており、こちらは2026年と2029年の導入が求められています。
この記事の後半では、最初の8点の機能の一覧と、スマートで安全なテクノロジーに対するScaniaの長年の取り組みについてご紹介します。
GSRが必要な理由とは?
GSRは、安全性の問題、そして手動および自動運転車向けデジタル技術の出現の両方に欧州連合が対応するために生まれました。
2021年にはEU圏内で2万件近い交通死亡事故が発生しており、安全性の問題は最優先事項となっています。
大型車両はこれらの事故の約14%に関与しており、道路交通量全体に占める割合を考えれば、これは大きすぎる数値と言えるでしょう。
事故全体の最大90%は人為的ミスが関わっており、最も一般的な事故は次の通りでした。
- 乗用車と商用車の追突事故。
- 右折しようとするトラックと、並走しながらも直進しようとする自転車の衝突。
- 車両の前方の道路を横断している歩行者との衝突。
これに加えて現代の複雑な交通事情を考慮すれば、ドライバーには自分自身や他の道路利用者、
歩行者の安全を守るための自動化された技術的支援が必要であることが分かります。
最も重要な人的側面以外にも、事故が運送業務の経済性全体に大きな影響を与える可能性もあります。
数日から数週間を要する修理のために車両が使用できなくなると、費用のかさむダウンタイムが発生し、
事故そのものに関わる賠償請求の保険費用も発生します。
デジタル化で多様な機能が実現し、すでにScaniaを含む複数のトラックおよびバスメーカーが先進運転支援システム(ADAS)
を導入しています。これにより、世界中でますます混雑する市街地の道路や幹線道路で、ドライバーはより多くの支援を
受けられるようになってきています。
同技術は、自動運転車の核でもあります。GSRは、これらのシステムを規制することで、標準的な一連の安全対策が実施されるよう支援します。
8つの必須安全機能要件
- 緊急制動表示灯:車両の後方にいる他の道路利用者に、車両が急に減速している、または急ブレーキをかけていることを知らせる点滅灯。
- タイヤ空気圧監視システム:車両の使用中にすべてのタイヤの空気圧を常時監視して、タイヤの空気圧が低すぎたり高すぎたりする場合にドライバーに警告するシステム。
- 側方衝突警報装置:車両の側方にいる歩行者や自転車と衝突する可能性をドライバーに警告します。低速時に作動します。
- 後退時情報システム:後退時に、車両の後方に物や人が存在するどうかをドライバーに知らせるカメラやセンサー技術。
- 発進情報システム:車両の前方死角付近にいる歩行者や自転車との衝突の可能性をドライバーに警告します。
- アルコールインターロック簡易化装置:さまざまなアフターマーケットのアルコールインターロック装置を取り付けて、飲酒運転の制限値を超えたドライバーが車両を運転するのを防止できる、標準化されたインターフェース。
- 居眠り運転および不注意運転警告:注意力の低下や、疲労の可能性があるとシステムが評価した場合に、ドライバーに警告します。
- 自動速度制御装置:カメラと、GPSにリンクした地図データベースを使用して、制限速度を超えないようにドライバーに警告します。
「スマートで安全な」Scania
Scaniaは、8点の必須安全機能の大半をすでに用意しています。
これはスマートで安全な移動が重要な柱となる、持続可能な交通システムへの移行を推進する取り組みの一環です。
プロジェクトに取り組むプロダクトマネジメント担当チームの3人が、さらに詳しく説明します。
「提供する既存機能のうち3点は、新しいデジタルエコシステムによって強化されています」
と、プロダクトマネージャーのCristina Banziは言います。
そして作業は順調に進んでおり、GSRの施行に向けて残り3点の機能も確実に準備が整うだろうと付け加えました。
プロダクトマネージャーのKushink Bazazも、「その必要性は自明です。私たちはすべての要件に従う必要があり、しかもそれだけで終わりません。
まだ法律で義務化されてはいませんが、他社に先行するその他の技術にも取り組んでいますので、そうした技術もお客様に提供できるようになるでしょう」
と述べます。
Scaniaの安全機能に対する取り組みには、GSRにも重なる他の2つの側面があります。第一はサイバーセキュリティです。
EUの別の法律で定められているように、車両のすべての電子アーキテクチャは、
運転中およびソフトウェア更新においてサイバー攻撃やコンピュータウイルスから保護される必要があります。
Scaniaではすでにプロセスと製品に強力なサイバーセキュリティインフラを備えています。
さらに、組織全体でサイバーセキュリティ意識向上トレーニングを行うことで、これを強化しています。
このことが製品とサービスのセキュリティを絶えず高めることに役立ちます。
第二は、多様な支援機能の実際の使いやすさです。
Scaniaでは、まもなく導入されるSmart Dash技術を用いて、ドライバーが安全に操作して、
搭載されたさまざまな安全機能やその他の電子機能を簡単かつ安全に管理できる、車両用デジタルダッシュボードを開発しています。
これはすべて、安全でスマートなソリューションに更なる努力を注ぐScaniaの取り組みの一環です。
「Smart Dashは、サイバーセキュリティをさらに高いレベルで実現し、GSRに準拠する、当社の新しいモジュール式電子アーキテクチャに基づいています」と、プロジェクトに携わるもうひとりのプロダクトマネージャー、Eduardo Landeoは言います。
「このデジタル技術を導入する主な動機は、安全な交通を先導する、という私たちの目的に合致する点にあります。
道路交通の統計を考えれば、問題の一端は交通業界にあったことが分かります。私たちは解決策の一端も担えるよう、懸命な努力を続けてきました。
生物の神経系にも例えられる車両のインテリジェンスが、「スマートで安全な」交通を実現すると私たちは確信しています」
【英文記事】EU’s new safety regulation for trucks and buses | Scania Group (SCANIA Global website/ English)