GRIFFINマガジン - 2024年8月5日
日本のニーズに合わせたトラックを提供するために。グローカル企業・スカニアの取り組み
各国に現地法人を設立するなどして、地域に根ざしながら、世界的に事業を展開する「グローカル企業」。トラックメーカーにおいても、世界レベルの技術をもとに、地域のニーズに合わせたサービスを提供するグローカル企業が活躍しています。
スウェーデンに本社を置き、約100カ国に拠点を持つScania(スカニア)もそうしたグローカル企業の一つです。2009年には日本法人・スカニアジャパンを設立し、日本ならではの課題に寄り添い続けてきました。ここでは、物流・運送業界における日本の事情について解説したうえで、日本市場に向けたスカニアの取り組みやソリューション、導入企業の声をご紹介します。
グローカルなトラックメーカーに期待される役割
グローカルとは、世界的規模の「グローバル(Global)」と局所的な「ローカル(Local)」を組み合わせた言葉です。グローカル企業は、国際競争力を高めるための戦略やビジネスモデルを持つ一方で、地域ごとの文化や習慣、法規制、ユーザーのニーズに合わせた製品やサービスを提供しています。
グローカルなトラックメーカーの強みとは?
では、トラックの開発や販売において、グローカル企業はどのような強みを持つのでしょうか。
まずは、最先端の技術を取り入れた、グローバルな品質基準に準拠する高品質なトラックを提供できることが挙げられます。例えば環境問題への対策においては、EUでは二酸化炭素や窒素酸化物など、自動車から排出される有害物質の上限値を定めた非常に厳しい規制「ユーロ6」があり、今後新たに適用される「ユーロ7」ではさらなる規制の強化や規制成分の追加が行われる予定です。こうした規制に準拠するため、特に欧州では環境に配慮したトラックの開発が積極的に進められています。また、世界中の車両から収集する膨大なデータを製品の改善や開発に活かせるのも強みといえます。
その一方で、現地法人などを通じてローカルな情報を収集し、地域のニーズや市場の特性に合わせたサービスを提供できるのもグローカル企業の特徴です。さらに、地域の言語や商習慣を理解して顧客とスムーズにコミュニケーションをとり、グローバルレベルで集められたデータやノウハウをもとに開発されたメンテナンスや修理サービスを、地域のサービス拠点を通じて提供できます。このように、グローバルとローカルの両面を活かした事業を展開できるのが、グローカル企業の強みです。
物流・運送業界における日本のローカル事情
物流・運送業界では、いわゆる「2024年問題」や日本特有の環境がもたらす課題への対策が求められています。主な課題は以下の通りです。
2024年問題への対応
2024年4月からドライバーの時間外労働が年960時間に規制されたことで、収入の減少によるドライバー不足や輸送力の低下、輸送コストの上昇などが懸念されています。その解決策として、自動車で行っていた輸送を鉄道や船舶を利用する手段に切り替える「モーダルシフト」の推進や、共同配送システムの構築、輸送効率の向上につながる車両の導入などの対応が迫られています。
ドライバーの労働環境の改善
日本のトラックドライバー不足は、2024年問題によってさらに加速するといわれています。ドライバーの高齢化も課題の一つで、報酬体制の見直しや拘束時間の短縮など、若手ドライバーにとって魅力的な労働環境づくりが急務です。また、女性トラックドライバーの活躍も期待されるところですが、割合は思うようには増えておらず、ライフステージに合わせた柔軟な働き方や労働環境の整備を推進する、視認性に優れた操縦しやすい車両を導入するなどして、女性の進出も積極的に後押しする必要があるでしょう。さらに、ドライバーの負担となっている、荷待ち・荷役の作業時間を減らす対策も必要です。
日本の気候と地理的条件
日本には四季があり、地域によって気候が異なるため、雪道対策や高温対策など気候条件に対応した車両が求められます。また、地形的に山が多く、坂道を走行する場面も少なくありません。さらに、決められた時間内に輸送するためには、渋滞や交通規制に配慮した効率的なルート設定も必要です。
環境問題への対策
日本のトラック運送業界における2019年度の国内のCO2総排出量は11億800万トンで、うち運輸部門が2億596万トンを占め、さらにその約2割が営業用トラックから排出されています。エコドライブの推進や環境に配慮した車両の導入は、環境負荷を減らすうえで欠かせないアプローチです。公益社団法人全日本トラック協会も、トラック運送業界で2030年のCO2排出原単位を2005年度比で31%削減するビジョンを掲げており、関係各社の対策が強く求められています。
日本市場のニーズに合わせたスカニアの取り組み
スカニアでは前述の課題をはじめ、日本のローカル事情に寄り添いながら、日本のお客様のニーズに合わせたオーダーメイドの輸送ソリューションをご提案しています。
ディーラーを通じたローカルなサポート
スカニアは、国内3カ所の直営ディーラーを含む41カ所の整備拠点を通じて、地域の事情を熟知した担当者の日本語によるサポートを行っています。また、各拠点では、約60万台の車両から収集したデータをもとに開発された、信頼性の高い万国共通の修理・メンテナンスプログラムを提供しています。今後はさらに整備拠点を拡大し、2027年までに60カ所に増やす計画です。
また、導入車両についても、お客様のニーズに合わせたソリューションをご提案しています。例えば、アイドリングをせずにキャブ内のエアコンを快適に使用できるシステムもその一つです。スカニアの完成ウイング車では標準装備ですが、そのほかの車両もオプションで搭載できます。
新型パワートレイン「SUPER」の展開
スカニアは、新型パワートレイン「SUPER」の提供を通じて、2024年問題の解決に貢献できると考えています。例えばSUPERは、運送会社のオペレーションコストの削減につながる優れた燃費効率や、長時間の運転でも疲れにくい室内環境と操縦性を備えています。また、車両の稼働状況をリアルタイムで管理できる車両管理者用のオンラインプラットフォーム「My Scania」とドライバー用の「ドライバーアプリ(日本での運用開始は2024年中の予定)」を統合することで、さらなる輸送効率や燃費の向上とあわせて、ドライバーの快適性や安全性、運転スタイルの改善をサポートします。
さらに、SUPERは、ヨーロッパのトラックメーカーのなかでも特に高い燃料効率を実現した長距離トラックに贈られる「グリーントラックアワード」を9回受賞しています。これは、スカニアの環境配慮に関する取り組みが評価されている証ともいえるでしょう。
課題の解決につながった導入企業の声
実際にスカニアを導入した企業の皆様から、さまざまな声が届いています。例えば、航空貨物輸送のパイオニア的存在とされる「平野ロジスティクス」は、スカニアの導入で長年の課題だった積載量を増やせただけではなく、採用面での効果を実感しています。
「ドライバーの採用面での効果がかなり大きいですね。スカニアに乗りたいからと応募してくる方もいますし、そのために地方から出てきて寮住まいしているドライバーも少なくありません」(平野ロジスティクス 取締役 営業本部長の益子 研一氏)
また、全国の建設現場に移動式クレーンなどの重量物を輸送している「大矢運送」は、狭い場所や勾配に強いスカニアの操縦性を評価しています。
「私たちが運ぶ部材は、大きく繊細なものばかり。その点、スカニアなら部材にも配慮して運ぶことができます。運び入れた先の立地に関しても、設置する場所が広くなかったり、アプローチに強い勾配があったりするため、細かな操縦が可能なスカニアが最適でした」(大矢運送 代表取締役 大矢 一彦氏)
国際海上コンテナの陸上輸送を中心に、海上と陸上をつなぐ物流を支える「川﨑コンテナ運輸」でスカニアを導入している背景には、次のような理由があるといいます。
「ドライバーが求めるからというのが第一です。やはり、居住性が大きいと思います。上り坂をぐんぐん走ってくれるパワフル感がいいという声も多いですね。当社では重量物を運ぶ機会が多いのですが、かなり重い荷物を積んでいるときも問題なく加速してくれます。強力な流体式リターダーで下り坂も安心して走れますし、ブレーキが加熱してきかなくなる心配はまずありません」(川﨑コンテナ運輸 代表取締役 川﨑 至公氏)
ローカルに寄り添うスカニアのソリューション
2024年問題をはじめ、日本の物流・運送業界はさまざまな課題を抱えています。どんなに機能に優れた車両を開発したとしても、それが地域のニーズに沿っていなければ、課題の解決にはつながりません。
持続可能な輸送システムへの移行を推進するスカニアは、日本のローカル事情を深く理解した輸送ソリューションを提案することで、日本企業の競争力強化をサポートできればと考えています。そんなスカニアの技術力を結集した新型パワートレイン「SUPER」の詳細につきましては、以下のページよりどうぞご確認ください。